「奥羽山脈」

東北地方の中心を南北へと貫く山脈である。この山にひっそりと住むのが獣の少年の姿をした半人前の神「ロウ」。共に同じ山で生活する動物たちと宴を張り、彼らの活気と共に唄を奏でることで自然に恵みを与えていた。山の中を駆け回っては一人前になる為に修行を重ね、動物たちと唄いながら平和に過ごしていた。

ところがある日、山の中を歩いていると、いつもとは違う動物たちの様子にロウは気がついた。

『動物たちが怯えている…。』

動物たちに話を聞くと、空に指をさしては様子がおかしいのと訴えてくる。

事を確かめるため、急いで山や崖を翔けて大木の枝の間を飛び移り、山の頂上に行くと、そこには見たこともないような厚い雲が山々を覆い、空が太陽の光を遮るように真っ黒な姿へと変わり果てていた。

ロウは辺りを見渡すと、動物たちが怯え巣から出てこない。植物たちも静かに潜めている光景を目の当たりにした。

『これじゃ山の活気が失い、宴ができなくなってしまう。』

宴ができないと、自身の神としての恵みの力が使えずに、山の木々や植物を枯らしてしまうのではないかとロウは焦っていた。

『このままでは動物たちも…』

不安と焦りの中、なにか自分にできることはないかと真剣に考えた。宴ができないとなると、他に元気と活気を授かれる場所がないのか…

目に入ったのが、暗い山々の先にあるふもとの人里の明かりだった。耳を澄ませれば、遠くから楽しそうな声が聞こえる。

思い出した。山のふもとには人間が生活していて、人が集まり活気が溢れる「祭り」を催していると誰かが話していた事を。

そこでロウは考えた。その祭りから生まれる活気を自分の力に変えることができるのではないか…

東北獣神来伝

動物たちや草木の活気を取り戻すため

厚く空に覆われた雲の原因を探るため

東北地方の祭りやさまざまな場所を駆け巡る旅が始まる…

唄は人々に希望を授け

元気に舞れば活気が溢れ

絆が勇気を受け継いでゆく

この真実をロウが気づくのはもう少し先の話。さあ、彼らに我々の底力をお見せしましょう。

東北獣神来伝

 

Episode.4 山形県 – 花笠音頭 -

※花笠音頭の楽曲を鑑賞しながらお楽しみ下さい※

あの頃は…たしか、世の中が第一次世界大戦で騒がしい時代…大正7年の夏だったかな。私が6歳の時だ。両親は農家を営んでいたが、その頃の山形は数年前に起きた大洪水の影響で農作物がまともに作れず、我が家の父はいつもぐうたらで畑仕事をしないで家で寝てばかりでいたから、すごく貧しい生活だった。

私はそんな父が嫌で反抗ばかりしていたから、いつも家から離れては山に釣りへ出かけていたんだ。

ここからが不思議な話かもしれないが、その山の川で釣りをしていると、犬のような姿をした青くて変な生き物が現れるようになって、釣り竿に興味を示すから一緒にしようかと声をかけて、釣りを教えていたらいつの間にか友達になっていた。

それからいつの日だったか、夜に父親とケンカをしてしまい私は家を追い出されてしまった。あの頃は近くに明かりなんてなかったから、暗くて夜道で泣いていたら…あの青い生き物が現れて声をかけてくれたんだ。

私は父親のことを彼に話したら、そのまま手を引っ張られて、徳良湖(とくらこ)のある場所に連れて行かれた。ここでお日様が昇るまで一緒にいよう。と彼に言われたから、ちょうど七夕の頃だったし、星空を見ながら夜が明けるまで2人で話をしていたのかな。そして周りが明るくなった頃、遠くから聞こえるたくさんの声で目が覚めたんだ。

「ヤッショウ! マーカショ!」

こっそり覗いてみると、ものすごい大人の数で大きな石を地面に何度も何度も打ち付けていた。今だから分かるが土突き(どんつき)という作業で、朝早くから徳良湖の築堤工事をしている最中だったんだな。
そこで父親の姿も見かけて、すごく驚いたんだよ。最近は夜寝るのが早いと思っていたら、影ではこんな事を…。

「これで、尾花沢の農業も復活するぞ!」

そんな声が聞こえた辺りで、後ろから

「さ、父さんに謝りに行って」

と背中を押されて父親の前に出されてしまったから、まぁそこはしぶしぶ謝って父親から渡された綱で、土突きの手伝いをしたんだよ。

「ヤッショウ! マーカショ!」

休憩が入って青い彼を探したら、もういなくなっていた。その翌年に徳良湖の溜池が完成し、かんがい用水のおかげで作物が安定的に収穫できるように変わった。

しばらく豊作が続いて町の人達も収穫を祝い、土突きの掛け声と一緒に菅笠を持って踊る習慣がつきはじめていたのかな。そういえばその頃にも青い彼が再び現れたから、お礼に菅笠をあげて一緒に踊りを教えてあげたな。

それからはもう父親も活き活きと働くようになって、家も裕福になり私をここまで育ててくれた。という話だ…な!

「じいちゃん。最後は相当端折っちゃってるよ。」
「さすけね。ハッビーエンデングったな(差し支えない。ハッピーエンドだな)※山形訛り」

「それで?この花笠踊りとどんな関係があるの?」
「その時の工事にあった土突きの掛け声と、汗水流して現場で働く人達を表現する踊りを加えた民謡として表現しているんだよ」
「優雅な見た目以上に、汗のにじむ踊りなんだね」
「当時の地元の人達が町を良くしようと一生懸命になっている姿が伝わってくるだろう?」

「さぁ、そろそろ本番だ。一生懸命踊ってこい!」
「はーい!」

※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。また、花笠踊りの発祥・ルーツについても資料を基に物語を構成しておりますので、事実と異なる可能性がございます※

事業実施要綱